パソコンやスマートフォンを使用する機会が増え、慢性的に目の疲れを感じている人が多いのではないでしょうか。
今回は、眼精疲労についてその原因と対策について医師に話を伺いました。

<神原先生のプロフィール>
神原 啓輔(カミハラケイスケ)
札幌医科大学医学部を2010年に卒業。札幌医科大学眼科学講座助教、JR札幌病院眼科科長、東苗穂すみれ眼科院長を経て、2024年現在は神原産業医事務所の所長、札幌市内眼科の非常勤医師として勤務。白内障や緑内障や網膜剥離などの網膜疾患の手術を中心に行いながら、神経眼科相談医の資格も保有しており複視などの症状や甲状腺眼症や視神経炎などの神経眼科領域も得意分野としている。

眼精疲労の本質

眼精疲労の本質

眼精疲労とは疲れ目といった一時的な目の症状とは異なり、慢性的に眼が疲れている状態を表し、眼痛・かすみ・充血といった目の症状を引き起こし、また頭痛や肩こりなど上半身を中心として体全体に影響を及ぼすことを言います。
最近では、若い人を中心に眼精疲労の患者は増えており、原因としてパソコンやスマートフォンといった電子機器を長時間使用する人が増えてきていることが挙げられます。近年では働き方の変化も大きく、外出が減り自宅での過ごし方が増えたことも原因の一つに挙げられます。

目が疲れるとはどういうことか

目が疲れるとはどういうことか

眼精疲労を引き起こす直接的な原因ですが、目の筋肉(毛様体筋)が緊張することによって起こります。
同じ距離を長時間見続けることで筋肉が凝り固まり、目の周辺やこめかみの辺りが痛くなります。
その他にも、ドライアイといった目の乾燥デジタル機器からのブルーライトや照度が足りていない暗い場所での作業でも眼精疲労を引き起こしやすくなります。
眼科医として眼精疲労を引き起こす目の疾患といった観点からお話をすると、近視や遠視、間欠性外斜視や外斜位の方で眼鏡やコンタクトなどの矯正を行わずピント(焦点)が合っていない状態が続くと眼精疲労を引き起こしやすくなります。

眼精疲労を感じたときにやるべき対策

眼精疲労を感じたときにやるべき対策

遠視や近視などピントが合っていない方は、まず眼鏡やコンタクトなど適正な度数を使用しましょう。
適正な度数が分からない場合は眼科クリニックや眼鏡店で測定することが重要です。
すでに矯正済みの方でも定期的に検査を行い、現状に合った度数に修正する必要があります。
多くの眼科では3ヶ月に1度、少なくとも1年に1度は視力を含めた目の定期検診を推奨しています。
次に、睡眠時間や休息の時間が足りているか確認しましょう。
睡眠時間が足りず、免疫力が低下している状態だと視界がぼやけることが多くなります。
昼休みの休憩時間に10分程度目を閉じてリラックスしたり、ホットアイマスクなどで目を温めたりすることも有効です。
また血行の観点から目を上下左右に動かしたり、様々な距離を見ること(例えば雲や空を眺めるなど)も眼のストレッチとなり血流を増やすことにつながり、眼精疲労を和らげる有効な手段となります。
これらの様々なことを行っても眼痛やかすみなど症状が改善しない場合は眼科クリニックで点眼薬の処方を検討してみましょう。
有名な眼精疲労の点眼薬はシアノコバラミンという成分が含まれるサンコバ点眼です。目のピント調節に関与する筋肉に働いて、調節機能の異常を改善する働きがあります。
またサンコバ点眼に加えてドライアイ改善薬のヒアルロン酸点眼を使用することで眼精疲労改善に相乗効果をもたらすこともあります。

眼精疲労と血行について

眼精疲労と血行について

眼精疲労の症状を和らげるためには、血行の改善も非常に重要です。
血行が良くなることで、目に酸素が適切に供給されます。酸素は身体の活動の源であるため、眼筋の疲労回復や、傷ついた筋肉の修復を早める効果が期待できます。
血流とともに老廃物の排出も行われるので、目の周りの組織が清潔で健康的な状態を保ち、眼精疲労の症状が軽減されます。
血行を改善する方法は様々あり、ジョギングなどの有酸素運動やストレッチは全身の血行を促進します。身体を動かしてポカポカと暖かく感じるのは血流が巡っている証拠です。
また緑黄色野菜に多く含まれるルテインやビタミンAやビタミンEなどの栄養素を含んだサプリメントも検討してみてもいいかもしれません。
ブルーベリーやカシスなども眼の周りの血行を良くするとの研究結果もあります。
血液の成分の多くは水であるため、水分補給も欠かさず行いましょう。水分が少ない血液は粘性が高くなり、円環な血液循環を妨げることになります。
血管を拡張することも血流改善の有効な手段です。ホットアイマスクなどで目の周りを温めると、目の周辺の血管が拡張します。
顔に近く、太い血管がある首元を温めることも有効です。
磁気も身体の内側の細胞に働きかけ血管を拡張させる効果があり眼精疲労の改善に寄与するものと考えられます。
焦点が合ってかすみが改善した研究報告もありますので、一度試してみてはいかがでしょうか。

目を疲れさせないことも大事

目を疲れさせないことも大事

慢性的に眼を疲れさせないために日常生活で何ができるのか考えて頂くきっかけになったでしょうか。
眼鏡やコンタクトレンズが合っているのかどうか確かめたり、同じ距離ばかり見ずに遠くのものを見る癖もつけてみたり、明るい場所で作業をしてみたり、目のマッサージやストレッチ運動を考えてみてはいかがでしょうか。
眼精疲労は1日、2日などの短時間で改善するものではありません。日常の小さな目を疲れさせない習慣を続け、積み重ねることが大切です。
また上に述べたようにアイケアには様々なアプローチがあり、自分に合った方法を見つけて取り入れていきましょう。みなさんの快適なアイライフ(eye life)を強く願っております。